market makerのアルゴリズム:彼らはどうやってあなたから利益を得るのか
🎯 学べること
このレッスンを終えると、次のことができるようになります:
- MMのアルゴリズム:bid/askで気配を出し、在庫とリスクに応じて調整する
- MMが在庫を抱えすぎたら(ロングに傾いたら)、askを下げて売りさばく
- Quote stuffing:気配を高速で書き換えて競合を鈍らせ、流動性を探る
- 枠組み:MMの在庫シグナルを見る → 気配の強引な引き下げ=売り抜け → 戻りを売る
⚡ 明日からできること(クリックで展開)
抱え込みすぎないこと。まずはこの3つから:
- 次の10トレードは指値注文に切り替える(100 %ルール) — 明日への宣言:「次の10トレードは、たとえ動きを逃してもすべて指値注文だけにする。」買うときはbid/askを見る。bid 100.00ドル、ask 100.05ドルなら、100.02ドル(仲値)に指値を置く。10秒待つ。約定しなければ必要に応じて0.01ドルだけ動かす。約定を記録する。askよりどれだけ有利だったか。例:50.00ドル/50.05ドル、指値50.02ドル、50.02ドルで約定=成行注文に比べて1株あたり0.03ドルの節約。200株なら6ドル。10トレードで60ドル。年100トレードで600ドル。1,000トレードで6,000ドル。slippageでどれだけ節約できたかを測る。「約定価格マイナスask」だ。二度と成行注文には戻らないこと。
- 次のエントリー前にレベル2のorder bookを確認する(見せかけの壁を見抜く) — 証券会社のレベル2画面(「Market Depth」または「Order Book」)を開く。エントリー前に買い注文と売り注文を見る。ほかを圧倒する巨大な注文はないか。例:100.10ドルに50,000株の売り、ほかの価格帯は500〜2,000株しかない。それはおそらく見せかけの壁だ(spoofing/layering)。market makerはこれであなたを怖がらせる。観察してほしい。30秒以内にその50,000株の注文は消えるか取り消される。最初から本物ではない。テスト:来週「怪しい」大口注文を3つ見つける。何本が約定し、何本が60秒以内に消えたか数える。70〜90 %は約定せずに消える。見せかけの壁に引っかかるのをやめよう。あれは実需ではなく、market makerの操作だ。
- 1週間、最初の15分(9時30分〜9時45分)と最後の10分(15時50分〜16時00分)は売買しない — 勝てるトレーダーと負けるトレーダーを最も鮮明に分ける行動の変化がこれだ。market makerはこの時間帯にスプレッドを広げる。ボラティリティが最大で、個人が殺到し、それが通ってしまうからだ。エリック・トンプソンが失ったのは $68,000 (-48.6 %)、7週間での話だ。勝率は52 %(戦略自体は優位性あり)だったが、slippageがその優位性を食い潰した。平均slippage 1株0.10ドル × 300株 × 1日60トレード=1日1,800ドル=7週間で63,000ドル。market makerの時間帯に成行注文を使った結果だ。AAPLの通常スプレッドは11時で0.01ドル、9時32分には0.08ドル(8倍の広さ)。500株なら1トレードあたり40ドルの損失。週3回で年6,240ドル。1週間ルール:9時45分までは売買しない、15時50分までにすべて手仕舞う。1週間後には、約定品質が40〜60 %改善する。
📋 前提となるレッスン
このレッスンは次の内容を土台にしています:
- レッスン01:流動性という嘘 — 機関投資家がどう流動性を仕込むかを理解する
- レッスン02:出来高は嘘をつかない — デルタ分析と吸収のパターンを身につける
- レッスン03:プライスアクションは死んだ — order flowとtape readingの基本を学ぶ
✅ ここまで終えていれば準備は万全です。まだなら基礎のレッスンから始めてください。
あなたが出す成行注文は、すべてmarket makerが約定させている。そして彼らはすべての取引で利益を得ている。
「成行で買う」を押した瞬間、反対側には誰かがいる。Citadel、Virtu、Jane Streetだ。こうした会社は個人のトレードの相手方になることで数十億ドルを稼ぐ。相場が上がろうと下がろうと横ばいだろうと関係ない。
🚨 厳しい現実
Citadel Securitiesの2022年の収益は75億ドルだった。 彼らは株価が上がることを願って稼いでいるのではない。稼いでいるのは 取り次ぐすべての取引 そのものからだ。
どうやって? スプレッドの獲得、逆選択の管理、在庫の操作、そしてPayment for Order Flow(PFOF)。
このレッスンの内容:
- スプレッドの獲得 — 収益モデルの中核
- 逆選択 — スマートマネーが動くとき
- 在庫管理 — デルタ・ニュートラルを保つ
- 操作の手口(spoofing、layering、quote stuffing)
- Payment for Order Flow(PFOF) — Citadelはこうして勝つ
- 個人トレーダーの防御戦略
📉 ケーススタディ:エリックが7週間で68,000ドルを失ったmarket maker地獄
トレーダー: エリック・トンプソン(複合事例)、32歳、ソフトウェアエンジニアからデイトレーダーへ(経験4年、口座14万ドル)、2024年7月〜8月
戦略: SPY/TSLA/NVDAの高頻度スキャルピング、1日60〜80トレード、保有時間1〜3分。2023年の成績:2,400トレードで+8.7万ドル(1トレード平均36ドル)。2024年は「速さ」を求めて成行注文100 %にし、回数を増やした
致命的な欠陥: 指値注文は一度も使わず、レベル2も一度も見ず、スプレッドが最も広い時間帯(寄り付き9時30分〜9時45分、引け15時50分〜16時00分、FOMC当日)に売買していた。「指値だと動きを逃すかもしれない。」
結果: 勝率は52 %(戦略自体は優位性あり)だったが、slippageが優位性を食い潰した。平均slippage 1株0.10ドル × 1トレード300株 × 1日60トレード=1日1,800ドルのslippageコスト=7週間で63,000ドル。損失は6.8万ドル(-48.6 %)。14万ドルから7.2万ドルへ。
slippageの惨事(2024年7月〜8月): エリックのセットアップ自体は堅実だったが、どのトレードもmarket makerに向かって出血していた。例:7月9日、9時32分のボラティリティのなかSPYを成行で買い、NBBOスプレッドは549.50ドル/549.58ドル(8セント)、約定は549.63ドル(slippage+5セント)=-86ドル。7月30日、FOMC当日にSPYの0DTEコールを成行で買い、仲値2.50ドル、スプレッド2.35ドル/2.65ドル(30セントの広さ)、約定2.68ドル(18セントの払いすぎ × 300枚=5,400ドル余計)。利益は4,500ドルだったが、本来は9,900ドルのはずだった。8月1日、決算当日のボラティリティのなかNVDAを成行で買い、スプレッド127.50ドル/128.20ドル(70セント!)、約定128.35ドル(slippage+85セント)=指値なら-300ドルで済んだところが-470ドル。8月23日の気づき:「勝率52 %、セットアップは堅実、なのに7週間で68,000ドルのマイナス。約定レポートには平均slippage 1株0.10ドルと出ている。私は1日60回、300株で売買している。1トレードあたり30ドルがslippageに消える=1日1,800ドル=7週間で63,000ドル。私はトレーダーではない。Citadelの現金自動預け払い機だ。」
立て直し(2024年9月〜10月): 新しい執行ルール:(1) 指値注文のみ、NBBOの仲値に置く(スプレッドをMMと折半する)、(2) エントリー前にレベル2で見せかけの壁とspoofingを確認する、(3) 9時30分〜9時45分と15時50分〜16時00分を避ける(スプレッドが最も広い)、(4) スプレッドがストップ幅の10 %を超えるなら見送る、(5) slippageを毎日測る(目標は1株0.01ドル未満)、(6) 回数を1日15〜20トレードに減らす(質を上げる)。結果:10週間で7.2万ドルから11万ドルへ(+3.8万ドル、+52.8 %)。勝率は52 %から67 %へ。slippageは1株0.10ドルから0.01ドルへ。1日あたりのslippageコストは1,800ドルから54ドルへ(-97 %)。
エリックの教訓: 「私はCitadelの現金自動預け払い機になって6.8万ドルを失った。成行注文は速いと思っていたが、実際は高くつく。1株0.10ドルのslippage × 300株 × 1日60トレード=1日1,800ドル=7週間で63,000ドル。勝率は52 %(勝てる戦略だ!)だったのに、slippageが優位性を食い潰した。market makerはせっかちな個人から利益を得る。私はレベル2を一度も見ず、見せかけの壁に40回以上引っかかった(損失4千〜1.2万ドル)。スプレッドが最も広い時間帯(寄り付き9時30分〜9時45分、引け15時50分〜16時00分)、つまりMMがスプレッドを5〜10倍に広げるまさにその瞬間に売買していた。FOMC当日の例:仲値2.50ドル、スプレッド2.35ドル/2.65ドル、約定2.68ドル=300枚で5,400ドルの払いすぎ。対策:指値注文のみ(NBBOの仲値)、レベル2の確認、荒れる時間帯を避ける、slippageを毎日測る、回数を減らす(1日60トレードから18トレードへ)。結果:slippageは97 %減(1日1,800ドルから54ドルへ)、勝率は67 %に上がった。指値が約定するのを2秒待つだけで1株0.09ドル節約できる。300株のトレードを1,000回やれば27,000ドルだ。速さでmarket makerに勝つことはできない。彼らの土俵に上がることを拒否しよう。」
ケーススタディの確認問題:エリックは勝率52 %(優位性のある戦略)で1日60回売買していたのに、7週間で68,000ドルを失った。平均slippageは300株のポジションで1株0.10ドルだった。エリックの致命的な誤りは何か。
bidで買い、askで売り、それを繰り返す
market makerの利益の柱は スプレッドの獲得だ。bid価格で買い、ask価格で売り、その差を懐に入れる。
例:
- 買い気配: 100.00ドル(買い手が払ってもよいと考える価格)
- 売り気配: 100.05ドル(売り手が求める価格)
- スプレッド: $0.05
仕組みはこうだ:
- Citadelがbidを出す:100.00ドル(10,000株まで買う用意がある)
- Citadelがaskを出す:100.05ドル(10,000株まで売る用意がある)
- あなたが500株の成行売り注文を出す → 100.00ドルで約定
- 別のトレーダーが成行買いを出す → 100.05ドルで約定
- Citadelの利益:数秒で25ドル (在庫を抱えるのは2つの約定のあいだだけだ)
規模: Citadelはこれを1日に 数十億 回おこなう。1株0.01ドル × 25億株= 1日2,500万ドル.
なぜスプレッドが存在するのか
スプレッドは、market makerが負う2つのリスクの対価だ:
- 在庫リスク: 相手方が見つかるまで数秒から数分、株を抱えること
- 逆選択リスク: MMが知らないことを知っている情報優位のトレーダーと売買してしまうこと
高流動性=狭いスプレッド
例:AAPL(アップル)
- bid:175.00ドル、ask:175.01ドル
- スプレッド:0.01ドル(0.006 %)
なぜこれほど狭いのか 1分間に数百万株が売買される → 相手方が簡単に見つかる。MM同士が価格で競争する。
MMの戦略: 極小のマージン、巨大な数量。Citadelは1株0.01ドルしか取らないが、AAPLを1日1億株さばく= AAPLだけで1日100万ドル.
低流動性=広いスプレッド
例:小型株
- bid:10.00ドル、ask:10.50ドル
- スプレッド:0.50ドル(5 %)
なぜこれほど広いのか 出来高が少ない → 相手方が見つけにくい。在庫リスクが高い → MMは何時間、何日も株を抱えることになる。
⚠️ 個人が落ちる罠:流動性の低い銘柄での成行注文
Redditで煽られている低位株が急騰しているのを見つけ、1,000株の成行買いを出す。約定するのは ask(10.50ドル)だが、仲値は10.25ドルだ。あなたは公正価値より2.4 %高く払ったことになる。
教訓: 流動性の低い銘柄では必ず指値注文を使うこと。
スマートマネーが動くとき、market makerは負ける
逆選択 とは、情報優位のトレーダー — ヘッジファンド、プロップトレーダー、インサイダー — が、MMの知らない情報を持ったままmarket makerと売買することで起きる。
例:
- あるヘッジファンドが、アップルが決算予想を上回ると知っている
- 発表の数秒前にAAPLをask(175.01ドル)で強引に買い上げる
- market makerはその注文を約定させる(流動性を出しているのだから当然だ)
- 決算発表:AAPLは180ドルまで跳ね上がる
- market makerはいま ショート のAAPLを175ドルで抱え、損失が膨らんでいる
⚠️ MMが情報優位のフローを嫌う理由
稼いだスプレッド(0.01ドル)は、逆行(5.00ドル)で吹き飛ぶ。彼らは ロードローラーの前で小銭を拾っている.
対策: MMはアルゴリズムを使って情報優位のフローを 検知 し、そのうえで スプレッドを広げ または 流動性を引っ込める 危険を察知したときに、そうする。
market makerはどうやって情報優位のトレーダーを見抜くのか
シグナル1:注文サイズ
個人は10〜100株を買う。機関投資家は10,000〜100,000株を買う。50,000株の成行買いが飛び込むと、MMのアルゴリズムは:
- スプレッドを広げる(askが100.05ドルから100.10ドルへ跳ねる)
- 注文の一部をより高い価格で約定させる(slippage)
- 即座にヘッジする(先物を買ってリスクを相殺する)
シグナル2:注文の速度
買い注文が突然急増したら、誰かが何かを知っている。例:AAPLは通常1分に100,000株を売買する。それが突然、10秒で500,000株の買いが入る。
MMの反応: アルゴリズムが「トキシシティ」を検知 → 流動性を引っ込める → 価格を上に付け直す。
シグナル3:時間帯
個人は寝ている。朝6時の活発な売買=夜間のニュースに反応している機関投資家だ。
MMの反応: スプレッドは より広い のがプレマーケットだ。例:AAPLのスプレッドは立会時間中は0.01ドル。朝7時には0.10ドル(10倍の広さ)。
market makerは方向性リスクを取りたくない
market makerは 投資家ではない。彼らが望むのは デルタ・ニュートラルであること。値動きではなくスプレッドで稼ぐことだ。
問題: order flowはランダムだ。買い手が多いときもある(MMはショートに傾く)。売り手が多いときもある(MMはロングに傾く)。
ここでちょうど折り返し地点です。重要な戦略はすでに学びました。
順調ですね! 必要なら軽く伸びをして、そのあと先の応用的な内容に進みましょう。
対策: market makerは 在庫管理アルゴリズム を使い、望まないポジションを素早く手放す。
MMはどうやって在庫を調整するのか
MMがロングのとき(在庫が多すぎるとき):
- 手口1: 気配を偏らせる(askを下げて買いを誘う)
- 手口2: dark poolでクロスする(機関投資家に流す)
- 手口3: 先物でヘッジする(SPY先物をショートして中立化する)
MMがショートのとき(在庫がマイナスのとき):
- 手口1: 気配を偏らせる(bidを上げて売りを誘う)
- 手口2: ほかの個人注文と内部で付け合わせる(インターナライズ)
- 手口3: dark poolから買う
マーケットメイクの暗い側面
market makerの手口がすべて合法で倫理的なわけではない。一部の会社は 操作の手法 を使い、個人を犠牲にして利益を最大化する。
手口1:spoofing
どんな手口か: 大量の見せかけ注文を出して需給の 錯覚 をつくり、約定する前に取り消す。
例:
- MMが見せかけの売り注文を出す: 100.10ドルに50,000株
- 個人は巨大な売り板を見る → 「この先は抵抗帯だ」と考える
- 個人は100.00ドルで持ち株を売る
- MMは50,000株の売り注文を取り消す(もともと売る気などなかった)
- MMは個人が100.00ドルで売ったばかりの株を買う
- 価格は100.20ドルまで戻る
- MMの利益:100ドルで買い、あとで100.20ドルで売る
合法性: 完全に違法 (ドッド・フランク法)だが、立証は難しい。当局は欺く 意図 があったことを示さなければならない。
手口2:layering
どんな手口か: 板の片側に複数の注文を並べて偽りの圧力をつくり、その裏で反対側で売買する。
例: MMは99.90ドル、99.85ドル、99.80ドルに10本の見せかけの買い注文を並べる(偽りのサポートをつくる)。個人は「強い買い意欲」を見て100.05ドルで買う。MMは個人に売り、そのあと見せかけの買い注文をすべて取り消す。
⚠️ 実際の事件:ナビンダー・シン・サラオ(2010年のフラッシュクラッシュ)
人物: ロンドンの実家から取引していた個人トレーダー
手口: layeringとspoofingでS&P 500先物を操作した
影響: 2010年5月6日のフラッシュクラッシュの一因となった(ダウは数分で1,000ポイント下落)
処分: 2015年に逮捕、自宅軟禁1年の判決
教訓: 地下室にいる一人の男がフラッシュクラッシュを起こせるなら、潤沢な資金を持つMMに何ができるか想像してほしい。
手口3:quote stuffing
どんな手口か: 何千もの注文を高速で出しては取り消し、order bookをあふれさせて競合を鈍らせる。
MMがこれをやる理由:
- 競合他社のHFTアルゴリズムを混乱させる「ノイズ」をつくる
- データ配信を遅らせる → MM自身のアルゴリズムがレイテンシーの優位を得る
- order bookを読みにくくする → 個人がためらう → MMはより良い約定を得る
数字: 2010年の各種調査では 全注文の70 %が取り消されていた しかもミリ秒単位で。その多くはquote stuffingによるものとされた。
速さの勝負
わずか 1ミリ秒 (0.001秒)速いだけで、market makerは競合よりも先にorder flowを見て、その情報優位から利益を得る。
レイテンシー・アービトラージとは何か
⚡ レイテンシー・アービトラージの説明
想定: 銘柄XYZは複数の取引所で売買されている(NYSE、Nasdaq、BATSなど)
- NYSEはXYZをbid 100.00ドル/ask 100.05ドルで表示している
- 大口の売り手が成行注文でNYSEを叩く → XYZは99.95ドルまで下がる
- HFTのMMがこれを捉えるまで 50マイクロ秒 (0.00005秒)
- HFTは価格更新が届く前に、まだ100.00ドルを表示しているNasdaqで即座に売る
- NYSEで99.95ドルで買い戻す → 1株0.05ドルの利益を確定
- これを1日に何千回も繰り返す
結果:HFTのMMは、個人や動きの遅い機関投資家より速いというだけで数百万ドルを稼ぐ。
どれくらいの速さの話なのか
| 速度の比較 | 時間(ミリ秒) | 備考 |
|---|---|---|
| 人がまばたきする | 300〜400ミリ秒 | 最も遅い基準点 |
| 個人トレーダーが「買い」を押す | 150〜300ミリ秒 | 人間の平均反応時間 |
| 証券会社の標準的な発注ルーティング | 10〜50ミリ秒 | Robinhood, TD Ameritrade |
| 機関投資家のアルゴリズム(遅いもの) | 1〜5ミリ秒 | ヘッジファンド、投資信託 |
| HFTのmarket maker | 0.05〜0.5ミリ秒 | Citadel, Virtu, Jump Trading |
| 最速のHFT(コロケーション) | 0.01〜0.03ミリ秒 | 取引所のすぐ隣に置かれたサーバー |
言い換えると: あなたが「買い」を押すころには、HFTのMMはすでに注文を見て、解析し、あなたより先に10〜20回のトレードを終えている。
コロケーション:究極の優位
コロケーション とは、取引所のデータセンター内にサーバースペースを借りることだ(文字どおり、注文の突き合わせエンジンから数メートルの距離になる)。
💰 速さの値段
コロケーション料金(NYSE):
- サーバーラックの賃料: 月25,000〜50,000ドル
- データ配信へのアクセス: 月10,000〜30,000ドル
- ネットワーク接続: 月5,000〜15,000ドル
合計:年48万〜114万ドル しかもインフラだけで
これを負担できるのは機関投資家のMMだけだ。個人がここで張り合うのは、銃撃戦にナイフを持って行くようなものだ。
マイクロ波の中継塔:マイクロ秒を削り取る
HFT各社が投じたのは 3億ドル シカゴ(CME)とニュージャージー(NYSE)のあいだにマイクロ波中継塔のネットワークを築いた。狙いはレイテンシーを 14.5ミリ秒(光ファイバー)から8.5ミリ秒(マイクロ波)へ縮めることだ.
なぜ? 光は開けた空気中より光ファイバーケーブルのなかを3分の1ほど遅く進む。この6ミリ秒の優位が、アービトラージで数百万ドルを生む。
✅ 個人トレーダーはどう戦えるか(結論:速さでは戦えない)
現実を受け入れる: 速さでHFTのMMに勝つことは絶対にない。挑まないこと。
あなたにできること:
- より長い時間軸で売買する: 4時間足や日足ではレイテンシーは関係ない
- きついスキャルピングを避ける: 1〜2ティックの利益を争わない(そこはMMの土俵だ)
- 重要な価格帯に指値を置く: MMのほうから来させる(追いかけない)
- 流動性の薄い時間帯に売買する: プレマーケットや時間外はHFTの活動が少ない
結論:別のゲームをしよう。パターン認識、order flowの分析、そして速さが関係しない数日単位のスイングに集中することだ。
「無料」の取引が無料ではない理由
Payment for Order Flow(PFOF) とは、証券会社(Robinhood、Webull)があなたの注文を公開取引所に回さず、market maker(Citadel、Virtu)に売る慣行のことだ。
取り決めはこうだ:
- あなたがRobinhoodで注文を出す(手数料無料)
- Robinhoodはあなたの注文を1株0.002ドルでCitadelに売る
- Citadelはあなたの注文を約定させ、スプレッドを懐に入れる
Robinhoodはどうやって稼いでいるのか
収益源: Payment for Order Flow(2021年のRobinhoodの収益の75 %)
計算してみると:
- Robinhoodの利用者は1,500万人
- 利用者1人あたり月平均100株を売買する
- 合計:月15億株
- CitadelはRobinhoodに1株0.002ドルを支払う
- Robinhoodの株式部門の収益:月300万ドル=年3,600万ドル(オプションのPFOFは1枚あたりの支払いがはるかに大きく、全体の大半を占める)
RobinhoodがPFOFを愛する理由: あなたが売買するほど 多く 支払われるからだ 多く (紙吹雪のアニメーション、プッシュ通知、「株が無料でもらえる」キャンペーン)。
Citadelはどうやって稼いでいるのか
Citadelがorder flowに金を払う理由: 個人のorder flowは 情報を持たない (逆選択リスクが低い)ので、非常に儲かるからだ。
計算してみると:
- CitadelはRobinhoodから月15億株を買う
- 獲得する平均スプレッド:1株0.01ドル
- Citadelの利益:月1,500万ドル=年1億8,000万ドル
- Robinhoodへの支払い(月300万ドル)を差し引いて= 年1億4,400万ドルの純利益
あなたはどこで損をしているのか
隠れたコスト: 手数料は払わないが、あなたが払っているのは 価格改善が得られなかったこと.
例:
- NBBO:bid 100.00ドル、ask 100.02ドル
- あなたはRobinhoodで成行買いを出す
- RobinhoodはそれをCitadelに回す(公開取引所には送らない)
- Citadelは100.02ドル(ask)であなたを約定させる
- こうします: 公開取引所には100.01ドルの売り手がいた
- あなたは1株0.01ドル余計に払った
規模: 1,000株なら10ドルの払いすぎ。年100トレードなら= 年1,000ドルの隠れコスト.
⚠️ SECの調査:PFOFは個人に年15億ドルの負担を強いている
2020年のSECの調査では、PFOFを使う証券会社の個人トレーダーは 約定品質が劣っていた PFOFを使わない証券会社(Fidelity、Vanguard)の顧客と比べての話だ。
コスト: 平均すると1株あたり0.01〜0.02ドル不利で、合計すると 年15億ドル が個人トレーダー全体の負担になる。
PFOF経由のレイテンシー・アービトラージ
最も陰湿な点はこれだ: market makerはあなたの注文が取引所に届く前にそれを見ている。だから彼らはレイテンシーの優位を使ってあなたの前に回り込める。
例:
- あなたはRobinhoodでAAPLを1,000株、成行で買う
- Robinhoodは注文をCitadelに送る(NYSEではない)
- Citadelは公開取引所より2ミリ秒早くあなたの注文を受け取る
- Citadelのアルゴリズムは、あなたの1,000株の買いが来ることを察知する
- CitadelはNYSEでAAPLを1,000株、175.00ドル(bid)で買う
- そのうえでCitadelはあなたに175.02ドル(ask)で売る
- Citadelの利益:20ドル。ポジションを持っていたのはミリ秒単位だ
なぜこれが合法なのか: Citadelは「流動性を提供した」と主張し、あなたはNBBOのaskを払った(それより悪くはない)と言う。しかし彼らは 知っていた あなたの注文が来ることを。つまり情報の非対称性.
個人トレーダーの防御戦略
market makerの優位をなくすことはできないが、 最小化 することはできる。
戦略1:必ず指値注文を使う
ルール: 約定の速さが価格より重要な場面を除き、成行注文は決して使わないこと。
理由: 指値注文なら価格を決めるのは あなた であって、market makerではない。
例:
- NBBO:bid 100.00ドル、ask 100.05ドル
- 悪い例: 成行買い → 100.05ドルで約定
- 良い例: 100.02ドルの指値買い → 売り手を待ち、1株0.03ドル節約
💡 プロの技:仲値の指値注文を使う
手口: 指値注文はbid-askスプレッドの 仲値 に置く。
bid 100.00ドル、ask 100.04ドル → 仲値=100.02ドル。100.02ドルに指値買いを置く。
利点: MMに優位をまるごと渡すのではなく、スプレッドを折半できる。
戦略2:流動性のある時間帯に売買する
ルール: 米東部時間の10時から15時のあいだに売買する(最初と最後の1時間、そして時間外は避ける)。
理由: スプレッドは流動性がピークの時間帯に最も狭くなる。MM同士の競争が激しくなる → 約定が良くなる。
例:
- 10時のAAPLのスプレッド:0.01ドル
- 9時31分(寄り付き)のAAPLのスプレッド:0.05ドル(5倍の広さ)
- 18時(時間外)のAAPLのスプレッド:0.15ドル(15倍の広さ)
戦略3:PFOFの証券会社を避ける(またはIEXに回す)
ルール: あなたのorder flowを 売らない 証券会社を使う(Fidelity、Vanguard、Interactive Brokers)。
理由: PFOFの証券会社はCitadelに注文を回し、MMにレイテンシーの優位を与える。PFOFを使わない証券会社は公開取引所に回すので、あなたに価格の優先権がある。
代替案: Robinhoodから動けないなら、注文を IEX(Investors Exchange)に回そう。レイテンシー・アービトラージをなくすために設計された公開取引所だ。
Interactive BrokersでIEXに回す手順:
- 発注画面を開く
- 「Route」のドロップダウンをクリックする
- 「IEX」(Investors Exchange)を選ぶ
- 指値注文を出す
利点: IEXには「スピードバンプ」(350マイクロ秒の遅延)があり、HFTやMMがあなたの前に回り込むのを防いでいる。
戦略4:追いかけない — 相場のほうから来させる
ルール: 指値がすぐに約定しなくても、指値価格を上げて追いかけないこと。
理由: market makerは あなたに追いかけてほしい のだ。彼らはわざと流動性を引っ込め、あなたにより高く払わせようとする。
例:
- あなたは100.02ドルに指値買いを置く
- askが100.10ドルに跳ねる(MMが流動性を引っ込めた)
- 悪い手: 取り消して100.10ドルで買い直す(まんまと乗せられた)
- 良い手: 30秒待つ。askはおそらく100.05ドルに戻る
📝 理解度チェック
market makerのアルゴリズムをどこまで理解できたか確認しよう:
AAPLのbid/askは175.00ドル/175.05ドル。あなたは500株の成行売り注文を出す。いくらで約定するか。
レベル2で100.10ドルに巨大な売り注文(50,000株)が現れたが、誰も約定させられないまま20秒で消えた。いま何が起きたのか。
あなたはRobinhood(PFOFの証券会社)で売買している。NBBOは100.00ドル/100.02ドル。1,000株の成行買いを出し、Citadelが100.02ドルで約定させた。これは公正な価格だったのか。
💡 market makerを理解する=約定が良くなる
- スプレッドの獲得 がMMの利益の柱だ。bidで買い、askで売り、それを何十億回も繰り返す。
- 逆選択 =情報優位のトレーダーはMMにとって損失の源だ。だからMMは「トキシック」なフローを検知したとたんにスプレッドを広げる。
- 在庫管理: MMは気配を偏らせ、dark poolを使い、先物でヘッジしてデルタ・ニュートラルを保つ。
- Spoofing、layering、quote stuffing =違法だがありふれた操作の手口。
- PFOF =「無料」の取引は無料ではない。あなたは悪い約定とレイテンシー・アービトラージという形で払っている。
- 防御: 指値注文を使い、流動性のある時間帯に売買し、PFOFの証券会社を避け、IEXに回そう。
📥 チェックリストのダウンロード: マーケットメイクとHFTへの防御チェックリスト(PDF)
market makerは悪者ではない。利益を最大化する存在だ。彼らの筋書きを理解し、罠を避け、規律をもって売買しよう。
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教育目的のみ。 トレードには重大な損失リスクが伴います。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。
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教育目的のみ。 トレードには重大な損失リスクが伴います。金融助言ではありません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。